MOBI6
ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
技術を深めながら、興味は全方位に張り巡らせて。それが自社の可能性を大きく広げる。
数ある加工業者の中で、発注側は「どこに依頼したらいいのだろう?」と悩むことは多い。受注側として同じ加工業者の中で頭ひとつ、いや2つも3つも飛び出すにはいかにすればいいか。その命題をスピーディーな対応力・マーケティング力、そして企画から試作・金型製造・製品加工までの自社完結力で発展してきたのが河島製作所だ。創業は1985年。当時28歳の河島直也代表取締役がたった一人で、20坪の長屋から始めた会社だ。それがアイデアと行動力で規模を拡大し続け、大東市への移転を経たのち、創業30年目にして発祥の地である東大阪に帰り、最新設備を導入した500坪もの工場を竣工。
「“マッハの河島”と呼ばれて、顧客に喜んでもらうことだけを考えてきました」。そう笑う河島氏。先ほどの強みリストに加えるなら、この社長の人間力によるところも大きい。同社では7軸ロボットはもとより樹脂成形における最新設備を備え、3Dスキャナーや光造形モデリング・マシンで、内部デザイナーによる企画、設計後すぐに造形・評価が可能。また昨年から社内で金型を製造できる体制が整ったのも大きい。金型メンテナンスもレーザー溶接機にて緻密に自社対応できる環境を持ち、プラスチック製品の企画から射出成形を主体に超音波溶着・塗装・印刷・アッセンブリーまでトータルな生産対応をしている。また社員の育成、特に技能検定に力を入れており、プラスチック成形部門1級技能士が4人在籍している。これまではおもにOEM受注によって製造・販売をおこなってきた。
代表的な商品ではボードフック・ネットフックなど約3,600種類以上の多品種を生産、「K」マークの樹脂製フックのシェアは国内1位・2位を競っている。またスマートフォンケースはこれまでに200種類以上、累計1,000万個も製造してきた。それに加えて最近では自社ブランドである「KAWASHIMA LINE」の販売を促進中。
スマートフォンケースの製造へ参入したのも早かったが、今度は話題の加熱式タバコ「iQOS(アイコス)」に着目し、独自のロック機能を持つケースをリリース。壊れやすいチャージャーに開閉機能とプロテクト機能を付加して負担がかからないようにしたもので、昨年秋の発売からすでに5万個以上を出荷している。
さらに最新作となるのが、Google Cardboardに対応したスマートフォン用の紙製VR(バーチャルリアリティ)ビューア「VRゴーグル」だ。この製品はボール紙製の組み立て型のVRヘッドセットで、顔と接触する3箇所にスポンジを配置することで、Cardboardにありがちな汚れやヘタレなどを防ぐ仕様。スマホの脱落を抑制する滑り止めシートや、隙間からの光漏れを軽減する遮光スポンジ、ゴムバンドなども付属し、快適な装着感を実現している。
もちろん随所に樹脂加工が活かされているが、ベースとなる素材は樹脂でなく、「紙」だ。この柔軟な発想には流行に敏感で面白いことは貪欲に素早く取り入れる、という河島氏のスタンスがよく表れている。
「ものづくりの世界で30年以上やってきて、樹脂成形は得意ですし、技術もありますが、樹脂だけにこだわってはいません」。そう言い切れる背景には卓越した技術や設備を持ちながら、そのうえでさらに視野を広げて挑戦する姿勢がある。それが同社の可能性をますます広げていく。
株式会社河島製作所
http://kawashimass.com/
東大阪市高井田中4-6-24 TEL 06-6789-5656