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25年の歳月をかけてつくったマシンが国産の意地を見せる。
溶接の火花が飛び交い、螺旋を描く鉄をつないでいく。スクリューの中央部に本来あるべき軸はない。
これが新光工業の誇る「無軸スクリューコンベア」だ。軸を持たず、スクリュー最後尾をモーターに直結させることで、搬送物が絡まない、低騒音のマシンとなっている。
コンベア末端部にも軸受けがないため、レイアウトフリーで狭い場所への設置も可能。またベルトのテンションの確認や、軸受の温度測定などの煩わしさもない。納品先の多くは下水処理場。最近では機械工場で出る切粉の搬送装置や、化粧品の原料パウダーの搬送にも使われている。下水処理は処理中に硫化水素が発生するが、完全密封型で漏れの心配も不要。くわえてスクリューが強いため10mまで縦設置ができる。外国製だと重力に負けてスクリューが縮んでしまうという。この違いは材料の差だと後藤経雄社長は語る。
「うちのスクリューの材料は非常に硬くて粘りが強いので、海外の機械では曲げにくいんです」。工場の奥に据えられた一台の機械。これが日本製の超硬力鋼を曲げる機械。後藤社長がイチから設計し、実に25年の歳月をかけ丹精込めてつくりあげた、同社の心臓部ともいえるマシンだ。ありあわせの材料で、通常の仕事の合間に少しずつ手を加えていった。
材料として砂利を運ぶダンプカーの下に貼られるほどの、硬さと粘りを兼ね揃えた超硬力鋼に目をつけたのは、13年前。周囲は「絶対に曲げられるはずがない」と冷ややかであった。
この「無軸スクリュー機械」ができるまでは、別の材料を使った完成品をドイツやイタリアから仕入れていた。実際に各国に赴き、機械を見せてもらっても、肝心の部分は企業秘密として二重、三重に囲われている。購入するにも高額すぎて手が出なかった。
「それなら、自分でつくろう」。機械いじりが好きで、製作した機械の話となると止まらない、そんな後藤社長の職人魂に火がついた。このマシンは今年5月に完成したばかり。どんな困難に襲われても、この情熱だけは消えることがなかった。
「1号機を曲げてみたら想像通り動くので、嬉しくてその日は機械の横で寝ました(笑)」。基幹部品のスパイラルスクリューは、特許も取得した。これが完成したことにより納期は一気に縮まり、コストも大幅にカットできるため、販売価格を下げることができる。
現状、大手企業では外国製品を購入しているが、ミルシート(鋼材検査証明書)がつけられた国産のものが使えるとなれば、必ずニーズはあるという。職人とは、ものをつくるプロセスを考え、道具を工夫する人である。
「何でも考えて手を動かせば、できると思うんですよ」。
その言葉には、「絶対曲がらない」と言われた鉄を曲げた自信に溢れていた。「外国の製品が近寄れない、そんな製品をつくりたい。国産の機械でもこんなにいいものがあることを知ってもらいたい」。
現在、生コン業界では、砂や石を洗浄する機械は外国製が主流、それを国産でできれば、コストは半減できる。頭のなかに構想はできており、後は図面を用意するだけ。「経営も営業も下手だけど、機械を触らせたら、自信があるんです」。
後藤社長はそう言って、とびきりの笑顔を見せた。
株式会社新光工業
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