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ものづくり企業の次の一手は? 毎号6つの旬な記事で熱い「変革と挑戦」を紹介するモビロク。
現状打破のヒントやモチベーションアップにつながります。
機械とは、あくまで人が使うもの。
加工の「現場から生まれた知恵」を製品化。
ものづくりの世界で機械は、大きく加工機械と工作機械に分けられる。工作機械は、工具の位置を手作業で調整するものから自動制御するNC機械へ、そして数種類の切削工具を内蔵して、さまざまな加工を1台でおこなえるマシニングセンタへと進化してきた。あえてこの時代に、手作業のローテク手動回転工具に活路を見出した企業がある。メイコーマシンは工業用特殊ミシンの開発から、2010年のJIMTOF(日本国際工作機械見本市)に自社製品を出展し、工作機械の周辺機器分野に本格的に参入した。「技術の最先端からすると手作業は、極力省きたい工程ですが、実際どんなに技術が発達しても熟練した職人による加工技術は必要不可欠です。私たちがつくっているものは、大企業が最先端に向かって進むなかで、捨てられてきた部分でもある」。そう語るのは代表取締役の中井敏文氏。手動による機械加工はシンプルだからこそ奥が深い。そこで求められるのは、職人の洗練された技術を思う存分、発揮してもらうための工夫だ。「今さらアナログな製品を出すには勇気がいりました。しかし他社が追いかけないところをやっていかないと、差別化できない。うちのように小さいところだからこそ、つくる意味があると思うんです」同社の代表製品である手動回転工具「サラエ丸」には操作ハンドルがついており、手動で運転する。これは機械を使用するプロの、細部にこだわるニーズを満たすための工夫のひとつ。
当時あった機械を進化させ、現場の知恵を絞ってより使いやすいものに仕上げている。価格もリーズナブルで、品質もいい。「こういうものを探していた」という声も多く、時にはまったくの異業種からも声がかかることもある。
ほかにもZ軸原点設定器「エムマス」や小型CNCインデックステーブルなど、現場で使える製品を続々と開発しており、現在は、ものづくり補助金の採択を受け、マシニングセンタ用のミーリングチャックの試作を進め、構造の一部で特許も取得。
これも展示会で聞いた「超硬刃物が抜けて困る」という声を、すくい上げて製品化に踏み切ったものだ。同社では技能向上のため、国家技能検定を推進している。
熟練職人の高齢化や引退を前にして、現状のレベルアップのために10年前から始めた取り組みだ。「みんなで一緒に勉強を始めようというところからスタート。その過程で技能検定を知って挑戦しました」。
中小企業は時間に追われて余裕がなく、教育より現場での経験を急いでしまう。そうすると我流になる。「最初は出勤日の土曜を勉強に充て、実技は研修に行かせた。とにかく続けることで、取り組む姿勢も違ってくる。
気がつけば、家でも休憩時間でも勉強している姿が見られた。自分たちのやっていることのほうがはるかにレベルは高いと思うけれど、基礎の部分がないので、そこを学び直す」。当初は3級を受けるだけで必死だったが、今では社員全員が2級を取得し、その半分は1級も取得。新入社員にも基礎から教育できるようになった。
「資格取得は目標です。それぞれが自信を持って成長することが目的。勉強することで、仕事も見違えるように意欲的になった。今ではどこに行っても恥ずかしくない自信がある」。人の役目を奪う機械ではなく、人の技術を活かすための機械をつくる。アナログな工作機械をつくりだせるのも、技能の育成と伝承に力を注いでいる会社だからできた、試みでもあった。
メイコーマシン株式会社
http://www.meikomachine.co.jp/
和泉市阪本町48-1 TEL 0725-46-2862