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東大阪に本社を構える下西製作所。元々はドアキャッチャーや筆入れの留め具などを作っていたが、ちょっとしたきっかけで扱い始めた磁石が、いつしか同社の主力分野となり、今では国内年間売上の約95%を磁石関係商品が占めるに至っている。下西巌社長は、次のように振り返る。「起業した当初、今のような仕事をすることになるとは夢にも思いませんでした。昔勤めていた会社で磁石を扱う商品がありましたから、多少の縁はあったのでしょうが、たまたま磁石を扱う話が舞い込んで、いつしか磁石を専門に扱う会社になったという訳です」。
現在同社は、磁石単体の販売の他、磁石を応用した様々な製品類を世に送り出し、近年はサニタリー等特殊分野にも意欲的に進出している。そのきっかけとなったのが、ある新製品 の開発だった。
ある企業の社長から「パチンコの玉が垂直に上がらないか」という注文が入った。 パチンコ玉のように点と点で接するものを垂直に持ち上げるのは非常に難しい。そこで、ゴムのひもを取り付けてみたり、らせん状に回転させながら持ち上げる仕組みを考えたり、と研究を重ね、その結果が「マグネコンベヤー」や「マグネポータ」等の工業製品の搬送器具に結実した。これらで特許を取得し、以降磁石応用製品が同社の主力の一つとなっていった。

同社が業績を伸ばしたもう一つの要因が、磁場設計シミュレーション・空中磁場の三次元測定機を導入したことである。
従来磁石を利用した製品に関して、例えば吸着力がどの程度の強さか、といったことは、試作品を作らなければ、確かめることができなかった。しかしこの装置を使えば、磁力線のおよぶ範囲を測定し、磁力の強さごとにパソコン上に表示でき、同時にその画面で磁場設計ができるため、試作品を作ることなく、正確なデータを割り出すことができる。磁場測定機を使用することにより、生きたデータとして扱うことが可能で、誤差が生じることはほとんど無いという。
これまで大手メーカーのみが行っていた手法を取り入れることによって、同社の信頼性が高まり、それが取引先に評価されることとなった。

このような高度な技術に基づいて製品の開発を続けるためには、優秀な人材を育てることが必要不可欠である。「うちには、大手家電メーカーの磁石研究所や、大手金属メーカー出身者が多数在籍しており、そういう優秀な人材が、若い人たちを育てることに注力しています」と語る社長。
現在同社では、東京大学の研究チームと提携し、磨耗しない「磁気ブレーキ」を搭載した省電力電車の開発を行っているのだが、試作品を簡単に作れるものではないだけに、同社の高度な磁場解析が必要とされているのだ。未来の交通機関の開発という、夢のある新しい研究に乗り出した社長は力強く語る。「これからも、とにかく新しいことをやり続けていきたいですね。そうでなければ、うちみたいな小さな企業が存在する価値はないと思うのです」。

サニタリー・マグネット応用製品の企画・開発・製造・販売、マグネットキャッチ・磁石・ゴム磁石製品の加工・販売、OA用特殊ヒンジ設計・製造・販売 等