国内最大級200ブースもの展示が見られるMOBIO常設展示場では、次々と展示内容を変えたり、見せ方の工夫をされて新しい訴求を増やしているブースもあります。MOBIOで会って、実物を見て、その場で商談もできるなど、スピーディな商談の展開も魅力です。本日はMOBIO常設展示場を活用されている4社の経営者に集まっていただき、そのメリットや成功事例を話していただきました。
伸縮自在な基板(ストレッチャブルPCB)や、印刷で回路形成するという主要製品に関しては、医療分野での使用も視野に入れて出展するサトーセン。『日本の技術をいのちのために委員会』の協力のもとに一昨年から運営されている、MOBIOの『健康・医療機器研究会』にも参画、積極的に新分野開拓を進めている
近畿工業は油圧シリンダーの部品加工からスタートしました。現在もシリンダーにまつわる金属加工がおもな仕事です。
理美容院の椅子や歯科医院の治療用の椅子、近頃では婦人科の分娩台といった医療系のものまで手がけています。基本オーダーメイドの一点物ばかりで、最近は食品加工機械の油圧ユニットなどの仕事も増えてきました。
金属プレスで昭和44年に設立した山田製作所です。製缶板金業として来年50周年を迎えます。コア技術である溶接で、産業機械を組み上げていきます。製品は一点物だけを扱い、今はリチウムイオン電池製造に関する装置部品生産が25%を占めています。
昨年まではジェネリック薬品をつくる装置など、装置メーカーの協力企業として発注を受けています。
サトーセンは電子部品の中に入っているプリント基板メーカーです。この業界は現在ASEAN地域が伸びているのに対して国内はシュリンク傾向にあり、残った国内メーカーも価格競争でシェアを取る流れになっています。
そのなかで当社は約30年前から海外大手企業のハイエンドな基板を手がけ、技術の蓄積もあって海外へと水平展開できました。現在も約7割が海外の非日系企業との取引で、さらに海外での新規開拓を進めています。
テンキングは弱電メーカーの部品加工からスタートし、ビデオデッキのドラムのシリンダー製作が中心になりました。タイに工場を設立してアセンブリまでおこない、一時期は全世界の製品の約20%を占めましたが、リーマンショックとビデオデッキの衰退が重なり、仕事の大半を占めていた発注がゼロに。
現在はタイで自動車関係と有名メーカーの一眼レフのボディなどを加工し、国内では視点を変えて高級化粧品のガラス瓶やスポイトの組み立て、検品などをおもな仕事としています。
MOBIO常設展示場の出展企業が自社製品をプレゼンテーションし、交流会で情報交換する「つながる場・勉強会」として月2回開催されている『MOBIO Cafe Meeting』。実はこれ、「かつての町の喫茶店のような場を、MOBIOに提供して欲しい」という近畿工業の田中社長のつぶやきからはじまったもの
展示は2012年10月からはじめました。見栄えを良くするために2014年に一度内容を刷新しています。今は析出硬化系や2相系ステンレスといった耐熱合金を加工したものを並べています。「こういった難しい加工ができます」とアピールしたタイミングで、発電機器関係の部品加工の受注がはじまったので、展示物を入れ替えたんです。
当社は2006年からで、最初からロボット・オブジェ型のものを出しています。うちではあらゆるものを一点物で製作しており、「当社の技術」とひと言で語れるものがない。
そこで考えたのが、このロボット。各ディテールを見れば、曲げや溶接といった技術を理解してもらえます。たまに「このロボット動きますか?」と聞かれることもありますが(笑)。今展示しているのは2代目でコンセプトは同じですが顔がモニターになっており、そこから自社のプロフィールや強みを発信しています。
初代は箒を持っていませんでしたか?
持ってました。初代が持っていたほうきは当社自慢の「3S活動」を象徴するものです。
展示をはじめたのは最近で、きっかけは新規顧客開拓のため。展示内容はMOBIOに丸投げしており(笑)、改めてブースを見ると寂しいし、分かりにくいので工夫が必要かなと。
展示会には頻繁に出展しており、そこでは戦略を立てて練りに練った仕掛けをしているのに、常設展示がこれではダメだなと感じました。今後は最終製品と並べて、「製品につながる自社の技術」というPRをしていきます。
私たちは2003年からの展示です。ビデオのシリンダーを生産していた頃は、営業が不要で社内に営業担当もいなかった。だからこの仕事がなくなった時には営業方法も分からず、営業のネタになるものであれば何でも、と出展したんです。展示の基本的なこともMOBIOの勉強会に参加して教えてもらいました。
実は展示だけでは効果が見えなくて、興味も失いかけていたんです。それがMOBIO常設展示に出展しているのがきっかけで『健康・医療機器研究会』に出席するようになって、はじめて他社の展示に目がいくようになって。これによる気づきは大きかったですね。自社のブースに取り込めるものもありますし、展示に関しても可能性が見えてきました。
これまでは「同業者に技術がわかればいい」という感じで展示していましたが、最近は発信する対象を学生や一般の人にも広げてわかりやすくすべきかなと考えていて。来年はラグビーのW杯も東大阪で開催されますし、これまでと違った来場者が訪れるかもしれない。海外から日本のものづくりに興味を持ってMOBIOまで足を伸ばしてもらった時に、シリンダーを並べるだけでなく最終製品ではどう使われているか理解できる展示にしたい。
すごく考えられていますね。
自分たちの身近なものをつくっていることがわかれば、学生に向けては職業教育の役割も果たせるし、ものづくりを一般の人にもっと知ってもらう機会になります。これによってカスタム製品の市場が広がるかなと。 私たちが大手企業とは違う形で伸びていくには、そういった個人客の獲得も必要だと思います。
たしかに私たちの仕事は、何が強みなのか一目では伝わりにくい。田中さんがおっしゃるように、BtoBの当社の顧客になりうる人だけが気づけばいいのかというと、もうそんな時代ではない。だから今後はさらに一工夫が必要になるでしょうね。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業で、水素・燃料電池関連分野における今後の取組の?向性を示した「H2Osakaビジョン」に参画し、日立造船が開発した業務・産業用固体酸化物形燃料電池発電装置(SOFC)。こちらの筐体は山田製作所の技術を集結してつくられている
昨年の話ですが、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の予算を利用して、日立造船から燃料電池のケーシングを受注しました。現在はプロトタイプを3台製作して、和泉市にある大阪府立産業技術総合研究所と咲くやこの花館で実験が進められており、あわよくば量産につながればと目論んでいます(笑)。これもここで日立造船の担当者に、当社の技術を集結させた「ホーキチ課長」を見ていただけたことがきっかけとなっています。
MOBIOのウェブサイトを通じて、海外のお客様から商談がきたことは何回かありますが、こちらの展示を通じて新しい顧客が見つかったことはないですね。成功事例ではないのですが、参考になったことはあります。 当社はカタログ商品は扱っていなかったのですが、最近自分たち独自のカタログを制作しはじめたんです。これもMOBIOの他社の展示ブースで、サイズごとのおおまかな価格を掲載したカタログを見てヒントをもらいました。
実はここでつながって動き出しているプロジェクトがあります。やっぱりここに来れば実物を見てその場で説明もしてもらえるから、話も早く進みますね。
私も金星さんと同じく『健康・医療機器研究会』に参加していて。これは月1回集まりですが、そのタイミングに合わせて自社の困りごとを持っていって「相談できる場」になっています。当社の専門分野外である電子部品について聞くと、みなさんからアイデアが次から次へと出てきて新たなステップに進めるんです。医療に関わらず、そういう場がもっとあれば、いろんなものづくりが一気に進むんじゃないのかなとは思います。 『MOBIO Cafe Meeting』がその役割を果たしているような気はします。
それとMOBIOに来られない時は、担当者にメッセージを送って助けてもらったり。先日も当社の伸びる基板に布を貼る必要が生まれた時、これまでの付き合いのある企業では対応できず困っていたところ、それを可能にする繊維メーカーを紹介してもらえました。そうやって新たな企業とつながることで、次の段階に入れるのも大きいです。
VTRドラムの加工からドラムユニットの組み立て、またデジタルカメラの光学ユニットの組み立てを行なってきた実績を持つテンキング。MOBIOの常設展示場では、非情に精度の高いアルミの加工を見ることができる
先ほどの山田さんのように、新規顧客を獲得して業績が上がれば一番いいのですが、それよりもいろんな業界の人とつながって、面白いことができればいいかなと、私は考えていて。たとえばある会社の製品の機構を油圧にしたいと相談されたこともあります。これは舞台用せり上げ装置で2人しか乗らないので結局油圧ユニットは不要だったのですが、本業とは関係なく夜な夜なつくりました。それが楽しい。だから「異業種の方と何か一緒にできて、最終的に商品化されたら嬉しい」くらいのスタンスで見ていますね。
ただ私自身もそうでしたが、社内でもMOBIO自体を知らない人が残念ながらまだ多い。
アクセスが悪いのが、ここが今ひとつ盛り上がらない一因かな。
たしかに私たちはクリエイションコアの時代から通っているのでそんな感じはありませんが、世間的にはそうかもしれません。でも「東の大田区、西の東大阪」と並び称されているんだから、国内のものづくりコミュニティでNO.1になるくらいにもっと有名になってもいいと思います。
組織の顔が見えないんですよね。仕切っているのが、市なのか府なのかわからないから、誰と話せばいいのかわからないこともあって。
いやいや、他の行政が運営しているところに比べれば、組織的にもMOBIOはしっかりしていると思いますよ。 それは実際に来ると分かるのですが、うまく発信できていない気がします。
その発信の部分は私たちが頑張らないと。大田区の町工場が知恵を出しあってつくった「下町ボブスレー」のように。
異業種の集まりは、「自立した企業の集合」でないとダメ。自分の足で立った企業が行政に寄りかかるのではなく、面白いものを発信しないと。大正区では若手企業経営者による「若葉会」がソーラーカーづくりを10年以上続けて、鈴鹿の耐久レースでも優勝しています。そこには「ものづくりって面白い」という発信があって、若い職人も参加していっている。ここもコワーキングスペース的に使って、何か困った時には常設展示場をまわってヒントを見つけたり、辞書のように使えればいい。そして電話して現場で相談して、新しいつながりができればいいんじゃないかな。
発信がいちばんの目的です。企業の「発信」は非常に大切な仕事で、それはトップが率先してやるべきだと思う。MOBIOでの常設展示はその一環として続けています。
価格的にリーズナブルという点と、いろんな企業の人が来られるということを考えれば、展示料金以上の価値はある。「テンキングの製品ならMOBIOに行けばいつでも見れる」というのは大きなメリットです。また『健康・医療機器研究会』がはじまってから多くのつながりが生まれて、MOBIOのありがたさもわかってきたところです。
まず「いろんな業種の人と知り合いましょう」という目的で、『MOBIO Cafe Meeting』がはじまって3年。それも100回を超えて、つながりがある程度できてきたところで、プラットホームをつくって欲しいとリクエストして生まれたのが『健康・医療機器研究会』です。そういったゆるい題目に対して高い専門性を持つ企業が集まって、自発的に何かをつくりはじめるというのが理想ですよね。
希望を言うなら大手メーカーには私たちの存在が知られていないので、そこに売り込みたいという気持ちが強いです。たとえばEVや医療に特化して、そこに興味のある企業で研究会をつくって一緒に行くということがあってもいい。
先日、大手メーカーの本社である県のものづくり企業が集まって、内覧会をおこなっていました。こういうこともMOBIOならできると期待しています。大手企業とつながれますし、仲間同士の結束も強まるはずです。
通常業務では同じ業界の同じ製品を扱う人と話をするわけですが、『MOBIO Cafe Meeting』では普段会えない業界の人の話が聞けるのが何より素晴らしい。たとえば本業とは関係なくとも、展示でサトーセンさんの「伸ばしても断線しない基板」を見て話を聞いたら、たちまち興味が湧く。個人的に今、ランニングにはまっていて、「これは心拍数を測るのに使えるのでは」という発想になるし。 そういう広がりがここでは生まれています。
自分の会社のアピールより、そういった「横のつながり」こそ、MOBIOにおいてもっとも有意義なものだと感じています。
そこが一番重要ですよね。10年前だったらライバルだった会社が、今やコラボ先に変わっていますから。やっぱりつくり手の顔が見えるというのは大きいです。
1959年創業以来ステンレスの薄板加工技術を駆使し、装置の設計から製作、組付けや据付調整まで一貫しておこない、リチウムイオン電池、医薬品などの製造装置を製作。年間250社以上が見学に訪れる、 3S活動でも有名
1930年設立。薄くて小さな基板、高放熱や複雑な加工が必要な基盤などハイエンド商品を得意とするプリント基板メーカー。通信関連の基板を中心に海外企業と直接取引をし、現在は医療機器・ヘルスケア産業分野に挑戦中
油圧シリンダーを中心に金属・非鉄金属部品の加工を手がける。卓越した社内加工技術と、60年以上かけて築き上げた80社もの協力企業のネットワークを活用して、素材選定から加工、工法提案まで一貫して対応している。
半世紀にわたる画像用精密部品製造で培われた、精密切削技術と高い品質管理能力により、さまざまな分野で顧客のニーズに応える技術集団。タイにも20年以上前から関連会社を設立し高精度と低コストを実現するべく取り組んでいる。
MOBIOの展示場は絶え間なく進化しています。最新情報はメールマガジンで配信します。
また、「あの会社のあの人に会いたい」大歓迎です。
○その他お問合せは下記よりお願いします。
現在は製品を展示して機能を伝えているだけですが、今後は最終製品と並べて、「ここに当社の基板が使われている」ことを明らかにしていこうと考えています、最終製品のなかでどのような役割を果たしているかを見せていくことで製品をより身近に感じてもらい、多くの人のアンテナにも引っかかるような展示に変えていきます。
展示品の選定は社員が自分たちで考えました。これによって、自社製品に対する想いが変化するきっかけが生まれました。さらにもっとわかりやすく、一般の方にもわかってもらえる展示にしていきます。
見てもらうだけで、当社の技術や技能を分かってもらえる展示として、ロボットを置いています。顔になるモニターでは、企業プロフィールをはじめ、会社の強みを発信しています。
展示場に出すための勉強会に当社の営業が参加し、展示の仕方からコピーの書き方までイチから教えてもらいました。せっかくだから見栄え良くするとか、常設展示場用の製品を新たにつくるなどをして内容も展示をはじめてから2回ほど替えています。展示ブースにあるのはタイ工場での加工技術です。研磨ポリッシュなどせずに、切削加工のみでミクロンオーダーの精度を出すことができる当社の技術を見せています。